占いコラム 32

カクシャ・トランジット

微細な運気がわかる『カクシャ・トランジット』

今回紹介する『カクシャ・トランジット』は、アシュタカヴァルガ体系に属するカクシャを使用した、微細な運気の良し悪しを判断できる便利な技法です。

カクシャは、アシュタカヴァルガ体系において、1つの星座(30度)を8つのパート(各3度45分)に分割した各パートのことです。各星座の0度から30度にかけて、動きの遅い惑星から速い惑星の順で、各惑星とアセンダントが、それぞれのカクシャ(各3度45分)を支配しています。その詳細は、以下の表の通りです。

アシュタカヴァルガのカクシャ(8つの区分)
カクシャ 土星 木星 火星 太陽 金星 水星 ASC
開始 00:00 03:45 07:30 11:15 15:00 18:45 22:30 26:15
終了 03:45 07:30 11:15 15:00 18:45 22:30 26:15 30:00

アシュタカヴァルガ体系において比較的よく使用されている、全惑星のビンドゥを集計したサムダヤ・アシュタカヴァルガや各惑星個別のビン・アシュタカヴァルガでは、トランジットの惑星がある星座(ハウス)を通過するとき、その星座(30度)の中のどの部分を通過していても、そこで獲得できるビンドゥ(吉ポイント)の数値は変化しません。

そこで、1つの星座を8つに区分したカクシャ(3度45分)へのトランジットを考慮することにより、獲得できるビンドゥの数値は、トランジットの各惑星がその時々に通過しているカクシャによって細かく変化するため、トランジットによる運気の判断において、より微細な判断が可能となります。

※ビンドゥ(点)を吉のポイント、レーカ(線)を凶のポイントとして定義するのが一般的ですが、インド占星術の古典を含めた書籍の中で、ビンドゥとレーカが正反対の意味で使用されていることもありますのでご注意ください。

カクシャを使って運気を判断するときには、影の惑星であるラーフ(ドラゴンヘッド)とケートゥ(ドラゴンテイル)以外の7つの惑星についてのみ考慮します。そのため、ビンドゥの合計は0点~7点の間になります。カクシャでは、トランジットする惑星のビンドゥを合計した数値の高さによって運気の良し悪しを判断します。このビンドゥの数値が多いほど運気が良くなり、少ないほど運気が悪くなります。

ビンドゥが0点のとき運気は最低となるので注意が必要です。1点・2点のときもかなり低い運気となり、3点・4点のときは平均的な運気です。5点・6点はかなり良い運気となり、7点のときに運気は最高になります。

今回は、難しい計算の話は抜きにして、インド占星術ソフト『パラーシャラの光』を使用して手軽にカクシャを用いる方法を実例を使ってご紹介します。

G.W.ブッシュ大統領USA大統領のサンプル

それでは、今から、大混迷を極めた2000年の大統領選挙時のG.W.ブッシュ元USA大統領のカクシャによる運気を検証してみましょう。まずは、下のG.W.ブシュ元USA大統領の選挙時(2000年11月)のカクシャ表をご覧ください。

G.W.Bush元大統領の2000年11月のカクシャ・トランジット
G.W.Bush元大統領の2000年11月のカクシャ・トランジット

このカクシャ・トランジットの表の左上には年月、その下には日にちが表示されています。ヘッダーに横方向に並ぶアルファベットの2文字はトランジットする惑星です。

そして、『緑』と『赤』のバーはカクシャを表していて、各トランジット惑星にとってのビンドゥ(吉点)が入っているカクシャは『緑』、入っていないカクシャは『赤』で示されています。

つまり、『緑』が多いほど吉で、『赤』が多いほど凶となります。そして、バーの右には、ビンドゥの数値の合計を棒グラフで表したものが示されています。この棒グラフの高さにより、一目で、その時々の運気の良し悪しを計ることができます。

※緑と赤のバーに記されている惑星は、そのカクシャの支配星です。また、そこに記されている数字は、そのトランジット惑星がその星座を通過するときに獲得するビン・アシュタカヴァルガ(個別アシュタカヴァルガ)の数値です。

  1. 2000年11月7日、大統領選挙の開票があった当日に「ブッシュ候補、当選確実!」の報道がなされましたが、その直後に撤回され、8日には「ゴア候補が優位!」と報道されました。このときのブッシュ候補のビンドゥは1点から3点までの間を行ったり来たりで常に低い状態でした。選挙直後にこの低いビンドゥでは、あまり強気にはなれません。何らかの問題があることを示しています。
  2. その後も、なかなか決着が付きませんでしたが、11月26日には、ブッシュ候補が、海外不在者票などでリードを広げ、「勝利宣言」によって政権移行への見通しがでてきました。このときのビンドゥは6点ですから、かなり好調と言えるでしょう。
  3. しかし、ゴア候補がフロリダ州での票の集計に疑問を投げかけ、票の手集計を求めました。州最高裁はゴア候補の要求を認め、手集計を命じていました。ブッシュ候補はこれに対して連邦最高裁に不服を申し立てました。このとき、もし、ゴア候補の主張が認められていれば、ゴア氏の逆転勝利の可能性もあったため、ブッシュ候補にとっては不安があったかもしれません。実際、連邦最高裁による決定が出る直前の12月2日と3日のブッシュ候補のビンドゥは1点でした。
  4. 12月4日、連邦最高裁は、「手集計を認めた州最高裁の決定の根拠は明確でない」として、州最高裁へ差し戻し、ゴア候補は全面敗訴しています。これを裏付けるかのように、12月4日あたりからブッシュ候補のビンドゥが大きく上昇し始めています。この頃のブッシュ候補には余裕があったことがわかります。
  5. そして、12月8日には、州最高裁が手集計の再開を命令したものの、その直後、9日に連邦最高裁がフロリダ州の手集計の中止を命令し、ここで、ブッシュ候補の当選が確実となりました。このとき(12月9日)のブッシュ候補のビンドゥは7点満点の最高点に達しています。カクシャ・トランジットの表には12月7日から12日までの間、ビンドゥは6点か7点の高得点をずっと維持していたことが示されています。
  
G.W.Bush元大統領の2000年12月のカクシャ・トランジット
G.W.Bush元大統領の2000年12月のカクシャ・トランジット

この2000年のアメリカ大統領選挙の推移とG.W.ブッシュ元USA大統領のカクシャ・トランジットはよくマッチしていると思いませんか?

しかし、これは決して特別なケースではありません。人の運命は、カクシャ・トランジットだけで判断できるほど単純ではありませんが、少なくともカクシャ・トランジットで読み取ることができる運気は存在しています。そして、その活用方法はあなた次第です。あなたも試してみてはいかがでしょうか?

※もちろん、カクシャ・トランジットだけで、選挙に当選するかどうかを判断することはできませんが、少なくとも重要な手がかりの1つにはなるでしょう。

※このカクシャ・バイオリズム表については、350円/1ヶ月分で、あなた独自のものを計算して提供いたします。また、いろんな人のカクシャ・バイオリズムを自分の占星術の実践として取り入れたい方は、インド占星術ソフト『パラーシャラの光』をお買い求めください。