ここでは、ハウスの吉凶について判断する際に重要なハウスの分類について説明します。一般的に、トリコーナ・ハウス(1・5・9室)は、吉意の強い、もっともすばらしいハウス。ウパチャヤ・ハウスは、凶ハウスですが、努力により、時間とともに良くなっていくハウス。ドゥスタナ・ハウス(6・8・12室)は、もっとも凶意の強い困難なハウスです。
功徳による幸運と富をあらわすトリコーナ・ハウス
1・5・9室はトリコーナ・ハウスに分類されています。トリコーナはラッキーな幸運のハウスです。例えば、アセンダントが牡羊座にあるとき、牡羊座(1室)・獅子座(5室)・射手座(9室)がトリコーナ・ハウスです。これらの支配星(火星・太陽・木星)は、機能的吉星となり、とても良い働きをするようになります。そのトリコーナ・ハウスの中で、もっとも吉意が強いのは9室、その次に5室、最後は1室となります。
12室 | 1室 | 2室 | 3室 |
11室 | アセンダントが 牡羊座のとき |
4室 | |
---|---|---|---|
10室 | 5室 | ||
9室 | 8室 | 7室 | 6室 |
トリコーナ・ハウスは、別名ラクシュミースタナ(ラクシュミー女神の位置)とも呼ばれています。ラクシュミー女神は幸運と富の女神であり、ラクシュミースタナである1・5・9室は幸運と富を表しています。そのため、これらのハウスに在住する吉星は、ホロスコープ全体にとても良い影響を与えます。
※1室は、トリコーナハウスであると同時に、ケーンドラハウスでもあります。ケーンドラハウスについては、占いコラム『ハウスのカテゴリー(1)』をご覧ください。
※トリコーナの支配星が強力に作用する時期は、一般的に、とても良い時期となります。その時期を知るためには、ヴィムショーッタリー・ダシャーやヨーギニー・ダシャーといったダシャーを計算する必要があります。このダシャーについては、占いコラム『インド占星術の未来予測技法ダシャー』をご覧ください。
努力による向上を表すウパチャヤ・ハウス
3・6・10・11室はウパチャヤ・ハウスに分類されています。例えば、アセンダントが牡羊座にあるとき、双子座(3室)・乙女座(6室)・山羊座(10室)・水瓶座(11室)がウパチャヤ・ハウスとなります。ウパチャヤ・ハウスとしてもっとも強力なハウスは11室、次に10室、それから6室、最後に3室の順となります。
12室 | 1室 | 2室 | 3室 |
11室 | アセンダントが 牡羊座のとき |
4室 | |
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10室 | 5室 | ||
9室 | 8室 | 7室 | 6室 |
ウパチャヤ・ハウスは、吉凶で言えば凶に分類されますが、このハウスに在住する惑星は、時の経過にしたがって向上し、良い働きをするようになるため、ウパチャヤ・ハウスは向上のハウスに分類されています。ちなみに、『ウパチャヤ』は、サンスクリット語で『向上』を意味します。
3室は努力や勇気、6室は労働や奉仕、10室は行為、11室は願望や達成を表しています。また、生来的凶星は困難なことや激しいことを表しています。
そのため、生来的凶星がこれらウパチャヤ・ハウスに在住すると、凶星が表す激しい努力や労働を意味するため、向上して、物事が達成されるようになります。逆に、生来的吉星がウパチャヤ・ハウスに在住すると楽をして怠惰になる傾向があるため、ここに生来的吉星が在住することはあまり歓迎されません。特に、6室に吉星が在住することは、お金儲け以外では良くない配置です。
※ウパチャヤ・ハウスが、向上のハウスとして機能するためには、10室に対する吉星の影響など特定の条件が必要です。
苦しみや困難を表すドゥスタナ・ハウス
6・8・12室はドゥスタな・ハウスに分類されています。 『ドゥスタナ』は、サンスクリット語で『悪い位置』という意味です。例えば、アセンダントが牡羊座にあるとき、乙女座(6室)・蠍座(8室)・魚座(12室)がドゥスタナ・ハウスとなります。この中でもっとも凶意が強いのは8室、次に12室、最後に6室です。
12室 | 1室 | 2室 | 3室 |
11室 | アセンダントが 牡羊座のとき |
4室 | |
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10室 | 5室 | ||
9室 | 8室 | 7室 | 6室 |
8室は精神的苦悩、12室は入院や投獄、6室は争い・事故・病気などのハウスであり、困難なことの多くがこれらのハウスに絡んでいるため、一般的に嫌われる傾向があります。
しかし、ドゥスタナ・ハウスの中でも、8室と12室はモクシャ(解脱・精神性・霊性)のハウスでもあるため、解脱・精神性・霊性などにおいてこれらのハウスはとても重要なハウスです。特に、8室や12室に対する木星・ケートゥ・水星などの影響は、精神性の観点からは大いに歓迎されます(逆に、これらのハウスに凶星の影響があると良くありません)。
※たとえ9室や5室などのダルマハウスが良くても、8室や12室の状態が良くなければ、単に現世的な幸運だけで終わってしまい、高度な精神性は約束されません。そのため、精神性をテーマとする場合、これらのハウスの役割が重要になります。
また、6室は、試験や競争に強いハウスなので、例えば、ここに凶星が在住すると勝負強くなったり、ヴィムショーッタリー・ダシャーで6室の支配星が作用する時期は試験・競争・訴訟・選挙などを含む勝負事全般に強い時期となります。
このように、一般的に凶ハウスに分類されるドゥスタナ・ハウスですが、占うテーマや全体の惑星配置(形成されているヨーガ)によっては、ドゥスタナ・ハウスが絡んでいても必ずしも悪いことが起きるとは限りません。
例えば、6室を支配する火星の時期に、難しい試験に受かったり、選挙に当選したり、訴訟で勝訴したり、あるいは、8室に在住する木星の時期に精神性において目覚しい進歩があるかもしれません。
このようなテーマによる判断の違いや全体的な分析の必要性を理解していない場合、なぜ凶ハウスが絡む時期に良いことが起きたのかが理解できず、「インド占星術のハウスも、西洋占星術のハウスと同じでうまく機能していない。」と早合点(はやがてん)してしまう可能性があるため注意が必要です。