ドリシュティ
惑星は、在住ハウスだけでなく、その対向に位置するハウス(在住ハウスから7番目のハウス)とその在住星に対しても大きな影響を及ぼします。これをインド占星術ではドリシュティと呼び、西洋占星術ではアスペクトと呼んでいます。
※現代の西洋占星術では、コンジャンクトもアスペクトのひとつとしていますが、インド占星術や西洋の伝統的占星術(古典占星術)では、コンジャンクトはアスペクトとは別の概念であるとしています。
※ドリシュティは『注視する』という意味のサンスクリット語です。
例えば、7室に在住する惑星は、7室のテーマである配偶者・結婚・対人関係に影響を及ぼすだけでなく、1室(7室の対向に位置するハウス)のテーマである身体・性格・全体的な特徴にも大きな影響を及ぼします。
下のホロスコープでは、木星が7室に在住しています。この場合、木星の影響により、身体の大きな配偶者あるいは精神的な要素の強い配偶者と結婚する傾向があります。それに加え、7室に在住する木星はそこから対向の1室にアスペクトすることになるため、その影響は1室が表すテーマ(チャート主自身の身体・性格・全体的特徴)にも大きな影響が及ぶことになります。
※実際の判断において1室の状態を見る場合、7室の在住星だけでなく、1室の在住星、1室の支配星、1室の支配星とコンジャンクト(同居)する惑星、1室の支配星にアスペクトする惑星など多くの複合的な要素を考慮する必要があります。
12室 | 1室 | 2室 | 3室 |
11室 | アセンダントが 牡羊座のとき |
4室 | |
---|---|---|---|
10室 | 5室 | ||
9室 | 8室 | 7室 木星 |
6室 |
部分的なアスペクト
惑星は、在住ハウスの対向に位置するハウスだけではなく、在住ハウスから数えて、4番目・8番目、5番目・9番目、および3番目・10番目のハウスに対してもアスペクトします。
例えば、1室に太陽が在住している場合、太陽は、対向の7室にアスペクトする他、3室、4室、5室、8室、9室、10室に対してもアスペクトします。しかし、そのアスペクトによる影響の強さは、アスペクトする位置によってそれぞれ異なります。
12室 | 1室 太陽 |
2室 | 3室 |
11室 | アセンダントが 牡羊座のとき |
4室 | |
---|---|---|---|
10室 | 5室 | ||
9室 | 8室 | 7室 | 6室 |
アスペクトする位置 | アスペクトの強さ |
---|---|
7番目のハウス | 100% |
4番目・8番目のハウス | 75% |
5番目・9番目のハウス | 50% |
3番目・10番目のハウス | 25% |
このように、インド占星術には、完全なアスペクト(100%の影響を及ぼす対向へのアスペクト)以外に、部分的な影響を及ぼすアスペクトが存在してるのですが、実際には、一般的な7番目のアスペクト以外を考慮しない占星術師が多いようです。
けれども、これらのアスペクトを考慮すべき根拠が存在しています。
例えば、水星が、1室に対して75%のアスペクトを投げかけるのと同時に1室の支配星に対して50%のアスペクトを投げかけている場合、水星の1室に対する影響は125%となります。この場合、水星が、7室から1室にアスペクトしているだけの場合(100%の影響)よりも、トータルでは、1室に対する影響がより強いことになります。
※経験上、西洋占星術において形成されるアスペクトのように、アスペクトのオーブ(許容度数)が狭い場合には、60度(3番目・10番目)、120度(5番目・9番目)、150度(4番目・8番目)など、7番目以外のアスペクトでも強い影響があります。特に、1度以内で緊密なアスペクトが作られている場合、そのアスペクトの影響は非常に大きくなります。
特別なアスペクト
対向のハウス(7番目のハウス)への完全アスペクト以外に、火星は4番目と8番目のハウスに、木星は5番目と9番目のハウスに、土星は3番目と10番目のハウスに対しても100%の強さでアスペクトします。
※ラーフおよびケートゥのアスペクトについては、諸説ありますが、一切アスペクトを考慮しないのが一般的です。しかし、経験上、木星と同じハウス(つまり、5番目、9番目のハウス)に対するアスペクトは、強く作用しており、無視できません。
惑星 | 特別にアスペクトする位置 |
---|---|
火星 | 4番目・8番目のハウス |
木星 | 5番目・9番目のハウス |
土星 | 3番目・10番目のハウス |
各惑星のアスペクトの強さ
各惑星がアスペクトする位置およびその強さは以下の表のとおりです。
3番目 | 4番目 | 5番目 | 7番目 | 8番目 | 9番目 | 10番目 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
太陽 | 25% | 75% | 50% | 100% | 75% | 50% | 25% |
月 | 25% | 75% | 50% | 100% | 75% | 50% | 25% |
水星 | 25% | 75% | 50% | 100% | 75% | 50% | 25% |
金星 | 25% | 75% | 50% | 100% | 75% | 50% | 25% |
火星 | 25% | 100% | 50% | 100% | 100% | 50% | 25% |
木星 | 25% | 75% | 100% | 100% | 75% | 100% | 25% |
土星 | 100% | 75% | 50% | 100% | 75% | 50% | 100% |
西洋占星術におけるアスペクトとのインド占星術におけるアスペクトの違い
- 西洋占星術においては、惑星と惑星の間にのみアスペクトが形成される(ハウスへのアスペクトは考慮されない)が、インド占星術においては、惑星と惑星の間以外に、惑星からハウスに対してもアスペクトが形成される。
- 西洋占星術においては、惑星と惑星の間で双方向にアスペクトが形成されるが、インド占星術においては、必ずしも双方向ではなく、惑星から惑星へ、あるいは惑星からハウスへの一方通行なアスペクトも存在する。
- 西洋占星術においては、形成されるアスペクトの種類に惑星による違いは存在しないが、インド占星術においては、惑星により(火星、木星、土星など)、形成されるアスペクトの種類に違いがある。
- 西洋占星術においては、惑星と惑星の間には、度数単位(あるいは、分数、秒数単位)でアスペクトが形成されるが、一般的なインド占星術においては、度数ではなく、ハウス単位でアスペクトが形成される。