宿命的要素は出生図で占う
西洋占星術において、出生図(ネータル・チャート)は、出生年月日時と出生地を基にして作成した、もっとも基本となるホロスコープ(天体図)であり、性格・才能・体質・健康など、潜在的・宿命的要素を占うために使用する基本的なホロスコープです。
未来予測には進行図(プログレス・チャート)を併用
ところが、出生図は誕生の瞬間という過去の一時点における惑星配置を記録したホロスコープであり、そこには動的要素が存在していないません。そのため、潜在的・宿命的要素についてはある程度まで占うことができても、出生図だけでは、それが発現する時期すなわち「いつ起こるのか?」を占うことができないのです。
そこで、西洋占星術では、未来予測をする手段の一つとして、出生図といっしょに、進行図(プログレス・チャート)という派生チャートを併用しています。
ホログラフィックな構造をもつ進行図
進行図(プログレス・チャート)は、「部分は全体を象徴している。」、「小さなサイクルは大きなサイクルを象徴している。」というホログラフィック理論に基づいて出生図を進行させたチャートです。
「ホログラフィック理論」とは、いかなる微細な部分の中にも、ほぼ完全な形で、全体の情報が含まれているという理論です。クローン牛のように、ある牛の皮膚や筋肉など体細胞の一部から、その牛と同じ姿形の(同じ遺伝子情報をもつ)生命体を作り出すという、クローン技術における最近の成果は、ホログラフィックな構造の正しさを証明しています。
ホログラフィック理論は、神秘学の分野(いろんな占術を含む)においてとても重要な理論です。例えば、人相占いや手相占いにおいて、人の顔や手のひらの細かな線から、その人の健康状態や運命を読み取る技術の背景には、ホログラフィックな理論構造が存在しています。また、アーユルヴェーダの脈診や舌診において、脈の状態や舌の状態から体全体の状態を診断する技術の背景にもこの理論が存在しています。
ポピュラーなセカンダリー・プログレッション
進行図(プログレス・チャート)には、いろんな種類があり、その中でもっともポピュラーな進行法は「1日は1年を象徴している」という考え方に基づくセカンダリー・プログレッション(1日1年法)です。
この理論によると、実際の天空の1日の動きが人生の1年に対応し、10才のときの状況は出生から10日後のホロスコープに、20才のときの状況は出生から20日後のホロスコープに示されていることになります。例えば、25才6ヶ月ちょうどの状況を占うときは、出生年月日時からちょうど25日と12時間後のホロスコープを進行図(プログレス・チャート)として使用します。
セカンダリー・プログレッションの使用方法
セカンダリー・プログレッションは、日々の日常的な事柄を占うのではなく、大きな人生の流れを占うために使用します。そして、ここでは、出生図と進行図の間にできる惑星・感受点のアスペクトを中心に分析していきます。まず、惑星Aと惑星Bのうち、惑星Aを1日1年法に基づき進行させます。この進行させた惑星Aと出生図中の惑星Bとの間にアスペクトができる時期にそのアスペクトの象意が現象化することになります。
正確な角度でアスペクトが形成される期間はごく短い間に限定されるため、通常、アスペクトにはある程度のオーブ(許容度数)が許容されています。どこまでオーブを認めるかについては意見が異なるところです。
ここで重要なことは、セカンダリー・プログレッションの惑星は動きが少ないので、そのアスペクトのオーブは最大でも1度以内にしなければならないということです。これがセカンダリー・プログレッションで、アスペクトの影響をある程度感じることができる範囲です。そして、何らかの重要な事柄が現象化するときには、オーブが限りなくゼロに近いほどタイトなアスペクトができていることが多く、その多くは20分以内です。動きが遅い木星・土星・天王星・海王星・冥王星などを進行させる場合は、それよりも、さらにオーブが狭くなる傾向があります。
特に重要なアスペクト
まず、出生図中の特定のアスペクトに注目します。仮に、0度・90度・120度・180度などの正確な角度ではなく、それぞれ4度・93度・117度・184度のように、若干のオーブ(許容度数)の範囲内のアスペクトが出生図中に形成されているものとします。その場合、その既存のアスペクトが、出生図と進行図の間で、オーブなしの正確なアスペクトができる時期を特に重要視します。
例えば、もともと出生図において、MCと木星がコンジャンクト(0度)を形成していて、そのオーブが4度あったとします。他の要素がそれを否定していなければ、このMCと木星のコンジャンクトは「職業上での成功」とか「幸運な地位・環境」という解釈が可能です。そして、出生図のMCと進行図の木星が正確にコンジャンクトする時期(あるいは出生図の木星と進行図のMCがコンジャンクトする時期)に、そのアスペクトの象意が現象化しやすくなります。
具体的な例としては、出生図のMCに対して、生まれてからちょうど40日後に、木星がオーブなしで正確にアスペクトしていた場合、このMCと木星のコンジャンクトの象意である「職業上での成功」や「幸運な地位・環境」は、40才の誕生日前後に現象化することになるわけです。
進行図中の惑星同士のアスペクトも検討する
プログレッション技法を使用する場合、上記のように進行図と出生図の間にできる惑星・感受点のアスペクトを検討する他に、進行図中の惑星・感受点同士のアスペクトも検討します。この場合も、出生図中にもともと存在しているアスペクトが進行図で正確なアスペクトをつくる時期を重要視します。けれども、もともと出生図中に存在していないアスペクトが進行図において形成される時期も、人生において新たな側面が発現する可能性のある時期として注目に値する時期と言えるでしょう。
ステーションの時期に注目
ある惑星が、順行から逆行に転じたり、逆行から順行に転じたりするとき、惑星の動きは見かけ上は停止した状態になります。西洋占星術では、この状態のことをステーションと呼んでいます。ステーションの惑星やそれに近い惑星は、進行速度が遅く、それに比例して、ホロスコープの中で大きな影響を及ぼすという原則があります。これは進行図にも当てはまります。
特に、進行図中においてある惑星がステーションになる(動きが止まる)時期には、その惑星に関連して、人生における重要な変化が起こりやすいため、注意深く分析する必要があります。そして、進行図においてアスペクトが正確に形成される時期と、ステーションの時期が一致する時期は特に重要な変化を表す時期となります。