占いコラム 5

吉星と凶星

吉凶の定義

占いでは『吉凶』という言葉を使います。『吉』は良いこと・楽しみ・安らぎ、『凶』は悪いこと・困難・苦しみと定義できます。

しかし、これは一般的な意味における『吉』と『凶』であり、魂としての成長という観点からは違った解釈が可能です。なぜなら、魂の成長につながる精神的な目覚めは、楽しみや安らぎからではなく、困難や苦しみからもたらされることが多く、その精神的な目覚めこそが、魂の成長を促して人を本質的な幸福へと導くものだからです。

つまり、『吉』と『凶』は、本質的には個人の価値観によって異なる相対的なものであり、特に、一般的な価値観と精神的な価値観とでは正反対になることもあるのです。そのため、実際の占いの際には、単に吉か凶かだけではなく、どの面では吉で、どの面で凶なのかを考慮する必要があります。

吉星と凶星

惑星は、吉星と凶星の二通りに大きく分類することができます。吉の作用を強く持つ惑星が吉星であり、凶の作用を強く持つ惑星が凶星です。そして、この吉星と凶星の分類には二通りあります。一つは生来的な分類であり、もう一つは機能的な分類です。

生来的な吉星と凶星

インド占星術では9つの惑星(ナヴァグラハ)を使用しますが、これらは、生来的に吉の作用を強く持つ吉星と、生来的に凶の作用を強く持つ凶星に分類されています。

最高の大吉星は木星、金星がその次に強力な吉星です。月は、その状態によって吉星にも凶星にもなり得ます。新月から満月へ向かう月は吉星で、満月に近い(太陽から離れている)ほど吉の作用が強くなります。そして、満月に近い月は、木星と同等の大吉星とみなされています。

それから、もっとも強力な大凶星は土星、そして、火星、ラーフ、ケートゥも強い凶星です。太陽は、西洋占星術では吉星ですが、インド占星術ではゆるやかな凶星とみなされています。ただし、太陽は、他の惑星からの影響を受けやすいため、同居やアスペクトによって吉星からの影響を受けると凶の作用よりも吉の作用が強くでるようになります。

月は、満月から新月へ向かう月は凶星で、新月に近い(太陽に近い)ほど凶の作用が強くなります。たとえ満月から新月へ向かう月であっても満月に近くて光がまだ十分に強い場合は吉星としての作用のほうが強くなります。

水星は、吉星でも凶星でもなく、基本的に中立星ですが、同居やアスペクトによって吉星からの影響を受けると吉星、凶星からの影響を受けると凶星になります。

インド占星術の生来的な吉星と凶星の表
吉星 木星、金星、満月に近い月(特に満月に向かう月)
凶星 土星、火星、ラーフ、ケートゥ、太陽、新月に近い月(特に新月に向かう月)
中立星 水星

インド占星術における生来的な吉星と凶星の分類では、『吉星』が3、『凶星』が6、『中立星』が1の割合であり、『吉星』よりも『凶星』のほうが多くなっています。これは、人生には、楽しいことよりも苦しいことのほうが多いという現実を表しているのかも知れません。

一方、西洋占星術では、木星、金星、水星、太陽、月を『吉星』、土星、火星を『凶星』としており、ほとんどの場合、天王星、海王星、冥王星などのトランスサタニアン惑星は『凶星』とみなされています。

機能的な吉星と機能的な凶星

西洋占星術における『吉星』・『凶星』は、生来的な分類によるものであり、機能的な吉凶はほとんど考慮されていません。

一方、インド占星術では、生来的な吉凶も考慮しますが、機能的な吉凶については、それと同等か場合によってはそれ以上に重視しています。惑星の機能的な吉凶は、その惑星がどのハウスを支配しているかによって決まります。

たとえば、幸運を司る9室を支配する惑星は、たとえそれが生来的に凶星であったとしても、機能的には吉星となります。また、過去世からの功徳を司る5室を支配する惑星も機能的な吉星となります。それから、自分自身である1室を支配する惑星は、9室や5室の支配星より弱い吉星です。

逆に、病気や事故を司る6室を支配する惑星は、たとえそれが生来的に吉星であったとしても、機能的には凶星となります。精神的苦悩を司る8室の支配星や損失・障害を司る12室の支配星も凶星となります。

ホロスコープの柱であるケーンドラハウス(4室・7室・10室)を支配する惑星は、吉でも凶でもない中立に向かう傾向があり、それが生来的な吉星の場合、良い力を発揮する能力が抑えられ(それゆえ、凶となる)、生来的に凶星の場合、悪い力を発揮する能力が抑えられます(それゆえ、吉となる)。