占いコラム 4

ドラゴンヘッドとドラゴンテイル
(ラーフとケートゥ)

西洋占星術におけるドラゴンヘッドとドラゴンテイル

西洋占星術では、諸説がありますが、一般的に、ドラゴンヘッド(竜頭)は、「過去世で積んだ良いカルマ(行い)の果報を受けとることができるポイントである」とか、「周囲の人間関係を表すポイントである」と言われています。また、ドラゴンヘッドの対抗に位置するドラゴンテイル(竜尾)は「過去世で受けた恩恵に対して、その借りを返さなければならないポイントである」と言われています。

そのため、西洋占星術では、一応、ドラゴンヘッドは吉、ドラゴンテイルは凶とみなされています。しかし、実際のホロスコープ解釈の中で、これら二つのポイントをどう活用すれば良いのか、あるいは、ドラゴンヘッドとドラゴンテイルの真の象意について、一般的に、あまり正確には理解されていないようです。

ドラゴンヘッドとドラゴンテイルの作用は非常に強力です。その作用を理解しないまま、出生図(ホロスコープ)の解釈にドラゴンヘッドとドラゴンテイルを取り入れると解釈を誤ることになるので、注意が必要です。

ドラゴンヘッドとドラゴンテイルは本当の惑星ではない

天文学的には、ドラゴンヘッドとドラゴンテイルは、実在の惑星ではなく、計算によって導き出される、月の軌道と太陽の軌道の交点です。そのため、西洋占星術では、ドラゴンヘッドはノースノード(北の昇降点)、ドラゴンテイルはサウスノード(南の昇降点)とも呼ばれています。これら二つは、常に正反対に位置しており、基本的には常に逆行しながら、約19年間で天空を一周しています。

インド占星術ではとても重要な惑星

ドラゴンヘッドとドラゴンテイルは、インド占星術から西洋占星術に移入されたものであると言われています。ドラゴンヘッドとドラゴンテイルの移入元であるインド占星術では、それぞれドラゴンヘッドをラーフ、ドラゴンテイルをケートゥと呼んでいて、これらの感受点を便宜的に惑星とみなしています。

インド占星術では、これら二つの惑星にはハウスを支配する権利を与えていないものの、それ以外の点では、太陽系の惑星、すなわち太陽・月・火星・水星・木星・金星・土星とほぼ同等の扱いをしています。実際、その作用の強さは、決して他の惑星に引けをとるものではありません。特に、あるハウスに在住する場合、他のどの在住星や支配星よりも、ドラゴンヘッドやドラゴンテイルがそのハウスを代表する惑星とみなされるほどです。

インド神話に見るドラゴンヘッドとドラゴンテイル

移入元のインド占星術では、ドラゴンヘッドとドラゴンテイルのどちらもが凶星として扱われていますが、その移入先の西洋占星術では、ドラゴンヘッドは吉、ドラゴンテイルは凶の感受点として扱っています。そして、インド占星術と西洋占星術とでは、象意も、重要度も、まったく異なっています。そこで、ドラゴンヘッドとドラゴンテイルの象意を理解するために、その起源にまつわるインド神話を以下にご紹介しましょう。

その昔、天界には、不死の甘露ソーマという飲み物がありました。この不死の甘露ソーマは「それを飲んだものは不滅の生命を得ることができる」とても貴重なものなので、天界の神々だけに飲むことが許されていました。

あるとき、天界では、ソーマによる神々の饗宴が催されていました。ところが、悪魔のドラゴン(竜)が、その饗宴にもぐりこんで、こっそりとソーマを飲んでいたのです。それを神々である太陽と月が発見したのですが、自分たちだけでは力不足で、とても太刀打ちできそうにありません。

そこで、太陽と月は、根源的な神であるヴィシュヌ神に、悪魔のドラゴンがソーマを盗み飲みしたことを告げ口することにしました。そして、太陽と月の報告を受けたヴィシュヌ神は、その場でドラゴンの胴体を頭と尻尾の二つに断ち切ってしまいました。

ところが、不死の甘露であるソーマを飲んでいたドラゴンは、死ぬことができず、ドラゴンヘッド(竜頭)とドラゴンテイル(竜尾)という別々の生き物として生まれ変わりました。それ以来、告げ口をした太陽と月に対して恨みを抱いたドラゴンヘッドとドラゴンテイルは太陽と月を飲み込もうとしていつも追い回すようになり、太陽と月はドラゴンヘッドとドラゴンテイルを恐れて逃げ回るようになったとされています。

インド占星術において、ドラゴンヘッドあるいはドラゴンテイルと、太陽あるいは月との相性は良くないとみなされていますが、その相性の悪さは、このインド神話に象徴的に語られています。

ところで、太陽と月は、ドラゴンテイルよりもドラゴンヘッドとの相性の方が悪いようです。ドラゴンヘッドには太陽と月を飲み込む頭(口)がありますが、ドラゴンテイルにはそれがないからです。

ドラゴンヘッドの根本的な象意は『飽くことのない貪欲さ』

ドラゴンヘッドは、頭だけで胃袋のない竜なので、食べてばかりで、満足することがありません。そのため、『飽くことのない貪欲さ』がドラゴンヘッドの根本的な象意です。『飽くことのない貪欲さ』のために、次から次へと欲望を増大させ、満足できない苦しみを持ち続けているのです。また、『飽くことのない貪欲さ』の裏返しとして、今まで得ていたものを突然失うときの苦しみも多く経験します。

ドラゴンヘッドは重苦しい圧迫するようなエネルギーを持っていますから、インド占星術では、ドラゴンヘッドは土星に似た働きをすると言われています。

ドラゴンヘッドが1室に在住する場合、その象意である『貪欲さ』がその人自身の性格に強い影響を与え、よく言えば積極的な性格、悪く言えば強引な性格となることがあります。また、変わり者で、改革を好む性質もあるようです。

ドラゴンヘッドは、凶星ですが、その位置する星座やハウス、あるいは受けるアスペクトによってはとても良い働きをすることがあります。ドラゴンヘッドは、パワーが非常に強いため、大きな達成や大成功をもたらすことがあります。

たとえば、これは政治家に多い配置ですが、ドラゴンヘッドが10室に在住する場合、10室のテーマである職業上での成功や地位の獲得に『飽くことのない貪欲さ』を発揮します。その結果、アスペクトや他の要素もそれを支援していれば、その目的を達成するための強力な推進力となり得ます。

また、ドラゴンヘッドが11室に在住している場合、11室のテーマである願望の達成や利益の獲得に向けて『飽くことのない貪欲さ』を発揮してそれを達成することでしょう。そのため、ドラゴンヘッドは、一般的に、精神性の面では良くない一方、いろんな条件次第では、現世的な面ではプラスに働くことがあるのも事実です。しかし、ドラゴンヘッドの力によって得られたものは永続性がなく、いずれはすべてを失ってしまうともされています。ドラゴンヘッドが強力に作用している時期には、あまり貪欲になりすぎないように注意が必要かもしれません。

ドラゴンテイルの根本的な象意は『純粋さ・精神性の高さ』

ドラゴンテイルは、尻尾だけの竜なので、ドラゴンヘッドとは逆に、貪ることがなく、『貪りのなさ・囚われのなさ』を特徴とします。また、頭がないドラゴンテイルは、思考から解放された存在として解脱や悟りの表示体でもあり、その根本的な象意に『純粋さ・精神性の高さ』があります。その『純粋さ・精神性の高さ』はインド占星術の九惑星の中でも最高レベルであり、超能力・直感・霊感もドラゴンテイルの象意に含まれます。

ドラゴンテイルなくして真の精神性は理解できない

精神性や宗教性を知るためには、木星に加え、ドラゴンテイルの状態を調べることが必要不可欠です。これは、占星術師としての素質を知る上においても重要な要素です。たとえば、12室はドラゴンテイルにとって最高のハウスです。次に8室、そして4室、それから5室も良い位置です。また、木星か水星がドラゴンテイルとアスペクトなどで関わることは非常に良い精神性を表しますが、その中でも、木星とドラゴンテイルのコンジャンクションは最高の組み合わせです。

しかし、木星とドラゴンテイルがオポジション(対抗)にある場合は注意が必要です。ドラゴンヘッドとドラゴンテイルはいつも必ず正反対に位置しているため、ドラゴンテイルと木星がオポジションなら、必然的に、ドラゴンヘッドと木星がコンジャンクトすることになります。これは『低俗なコンビネーション(グル・チャンダラ・ヨーガ)』として知られるもので、精神性にとって悪い表示です。

なぜなら、精神性や宗教性を象徴する木星と貪欲で現世的なドラゴンヘッドとのコンジャンクトは、自我(エゴ)による精神性・宗教性の破滅を象徴しているからです。このドラゴンヘッドと木星のコンジャンクトに対して、さらに火星や土星がアスペクトなどによって影響を与えている場合、このコンビネーションが表している『低俗』の象意がより強くなります(このプラスアルファがあるかどうかは大きな違いです)。

ところで、『純粋さ・精神性の高さ』を象徴するドラゴンテイルがどうして凶星なのでしょうか?

それは、ドラゴンテイルの特徴である『貪りのなさ・囚われのなさ』から、突然仕事や勉強をやめて精神性に目覚めたり出家したりするようなことがあるからです。苦しみは精神的に目覚めるための起爆剤となるものである一方で、そのように精神的な目覚めを喚起するような突発的な事故・病気・その他の不幸な出来事もドラゴンテイルの象意に含まれています。当然のことながら、このような出来事は、世間一般の現世的観点からは悪いことです。それゆえに、ドラゴンヘッドとは別の理由から、ドラゴンテイルも凶星といえるのです。

ドラゴンヘッドとドラゴンテイルに共通する象意

ドラゴンヘッドは『飽くことのない貪欲さ』、ドラゴンテイルは『純粋さ・精神性の高さ』を表し、この両者はまったく正反対の象意を持っていますが、実際には、共通する象意も多く存在しています。例えば、『異常性・突発性』は、ドラゴンヘッドとドラゴンテイルに共通する特徴です。そこから、難病・奇病・不治の病・突発事故などの象意が導き出されます。さらに、『異常性』から、外国などの異文化も象意として導き出されます。

たとえば、学習を表す5室にこれらの惑星が在住する場合、外国に関するものや外国から入ってきた技術・文化・言語などを学ぶ傾向があります。また、人物でいえば、一般社会から外れた人、身分の卑しい人、あるいは外国人も象意に含まれます。たとえば、ドラゴンヘッドが結婚を表す7室に在住するか7室の支配星とコンジャンクトしている場合、外国人との結婚を示す一つの要素となります。

ドラゴンヘッドとドラゴンテイルは明確に機能している

ここに書いてきたドラゴンヘッドとドラゴンテイルの象意は、機能しているのかどうかが曖昧な単なる理論上の知識ではなく、インド占星術を実践に取り入れている占星術師がであればおそらく誰でも実感しているほど確かに感じられるものです。

とは言え、インド占星術を本格的に実践していない段階では、「数ある占星術的要因の中でそれがドラゴンヘッドとドラゴンテイルの作用であるとなぜ断定できるのか?」、「他の惑星の作用をドラゴンヘッドやドラゴンテイルのものと勘違いしている可能性はないのか?」という疑問が生じることがあるかも知れません。

これについて、インド占星術には、惑星の作用を確かめることのできる『ダシャー』という確立された信頼できる未来予測技法が存在しています。『ダシャー』でドラゴンヘッドやドラゴンテイルが作用している時期にどのようなことが起きたのか(あるいは起きるのか)を観察すれば、その象意の正しさを実感できるはずです。

ドラゴンヘッドとドラゴンテイルについて書こうと思えば、それだけで一冊の本ができるくらい膨大なものです。ここでご紹介した内容は、その一部に過ぎないことをご了承ください。ドラゴンヘッドとドラゴンテイルの精神性・霊性における側面については、スピリチュアル占星術の記事の中でも触れています。興味のある方はそちらもご覧ください。